André Gide ‘Les Nourritures terrestres (1897)’ / アンドレ・ジッド 「地の糧」 (新潮文庫、1952) 今日出海訳

André Gide ‘Les Nourritures terrestres (1897)’ / アンドレ・ジッド 「地の糧」 (新潮文庫、1952) 今日出海訳

book information / 本の情報

著 者 :André Gide / アンドレ・ジッド
タイトル:Les Nourritures terrestres (1897年) / 地の糧 (新潮文庫、1952年) 今 日出海訳
補 足 :堀口 大學訳の「地上の糧」 (角川文庫、1953年) もある。

review / レビュー

André Gide ‘Les Nourritures terrestres (1897)’ / アンドレ・ジッド 「地の糧」 (新潮文庫、1952年) 今日出海訳は、1927年版の序が挿入されていて、ジッド本人が、次のように行っている。(日付は1926年7月とある。)

1.地の糧は病人の書ではなくとも、少なくとも回復期の患者の、平癒したものの – かつて病気だったものの書である。この書中を流れる叙情趣味 には、危うく失いかけた或るものとしての人生を抱き締める者の過激さがある。

2.どの点でこの書が時代の嗜好と抵触するか、これがこの書の全的不成功をあけすけに見せるゆえんである。(中略)十年かかって精確に五百500冊売れた。

この本は、ナタナエル(読者を想定)に対し、様々な語りかけをするスタイルをとっている。彼は教えてくれる。情熱について、瞬間について、生きることの喜びについて。

アンドレ•ジッドの「地の糧」の中からその言葉をいくつか抜粋してみる。この言葉は手帳はメモ帳に書き写しては繰り返し読んできた言葉たちだ。その書き写したこの言葉たち一体どれだけ自分を鼓舞してくれただろうか。人生には胸に抱きしめて生きるいくつかの言葉が必要なのだと知った。一緒に年を取れる本が10冊あれば、きっと生きていくのに十分だ。ジッドはナタナエルへの語りかけを通じて人生を教えようとする。あとは私たちがそこから何を拾うか、だ。

quote / 引用

・はじめに
p.5私は虚飾も羞恥もなくこの本を書いた。ときとしては見たこともない国、書いだこともない香り、行ったこともない行為について - 或いは未だ会ったこともない君、ナタナエルについて私は語っている。しかしこれは偽りごとからではない。ましてこれらの事柄も、私の本を読んでくれるナタナエルよ、将来君のものとなるだろうとも知らないでいる君に私が与えるこの名ほどに偽りはないのだ。

それから、君はすっかり読んでしまったら、この本を捨ててくれ給え。 - そして外へで給え。私はこの本が君に出かけたいという望みを起さしてくれるように願っている。どこからでもかまわない、君の街から、君の家庭から、君の書斎から、君の思想から出てゆくことだ。私の本を携えて行ってはいけない。もしも私がメナルクだったら、君の案内に君の右手を取ったろう、しかも君の左手はそれに気づかなかったろう。街から遠く来たところで、できるだけ急いで、この握られた方の手を振放して私は言うだろう。「私を忘れてくれ」と。私の本がこの本自身よりも君の - さらに君よりも他のすべての人の興味を惹くように教えてくれるように祈る。

・第一書
p.10 ナタナエル、大切なことは君の眼差しの中にあるので、君が見るものの中にあるのではない。

p.11 行為の善悪を判断せずに行為しなければならぬ。善か悪か懸念せずに愛すること。ナタナエル、君に情熱を教えよう。平和な日を送るよりは、悲痛な日を送ることだ。私は死の睡り以外の休息は願わない。私の一生に満たし得なかったあらゆる欲望、あらゆる力が私の死後まで生き残って私を苦しめはしないかと思うと慄然とする。私の心中で待ち望んでいたものをことごとくこの世で表現した上で、満足して、- 或いは全く絶望しきって死にたいものだ。

p.13 憂鬱は凪いだ熱情に他ならない。

p.21日の死に去る時刻として夕暮れを眺め、全てが生まれる時刻として朝を眺めたまえ。君の幻想の一瞬ごとに新しからんことを。全てに驚く者こそ知者なのだ。

p.22ナタナエルよ、君は心のうちであらゆる書物を焼き捨てなければならない。

・第二書
p.31ナタナエル、未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ。各瞬間ごとに類なき新しさを摑み給え。そして君の喜びをあらかじめ準備してはならない。それともその準備した場所に着くと、また別個な喜びが突然君の前に現れるものだということを、知り給え。

p.32「これはよかった」と言えない場合には、「しかたがないさ」と言って退けたまえ、ナタナエルよ、そこに幸福の大きな約束がある。

p.36一切のものは適当な時機にやってくるものだ、ナタナエル、一々はその要求から生まれるので、いってみれば要求に形態を与えたものに過ぎない。

p.38 ナタナエルよ、君は自分に似る者のそばにとどまってはならない。君は絶対にとどまってはならない、ナタナエルよ。周囲が君に似てきたら、また君が周囲に似てきたら、ただちに、それはもう君のために利益のないものだ。君の家庭、君の部屋、君の過去、君にとってこれほど危険なものはのほかにはない… すべてのものから、その教訓だけを受けとりたまえ。そして事物から流れ出る悦楽がやがて教育を涸渇せしめるように。

ナタナエルよ、僕は瞬間について君に語ろう。瞬間というものがどんなに重要か君は理解しているか?死にたいする認識の不在が君に自分の生命のどんな短い一瞬間もどんなに器用だか理解させなかったのだ。君にはわからないだろうか?死の暗い背景の前に持ち出されたのでなかったら、人生の瞬間はこれほどの輝きは持たないはずだと。

・結論風の賛歌
p.165 ナタナエル、もう今は私の本を投げ棄ててくれ。そこから離れて、自由になってくれ給え。私から別れ給え、別れてゆき給え。今では君は私の邪魔になる。君は私を束縛する。君のために誇称した愛が、私に付き纏いすぎる。私は誰かを教育するふうに見せかけることに疲れている。いったいいつ私は、君に私と同じようになってくれと言ったろう? – 私が愛するのは、君が私と異なっているからだ。 - 教育する!ジブ自身以外の誰をいったい私は教育しよう?なた寝る、君にこうしたことまで言うのだろうか?私は絶えず自分を教育した。今なお続けている。私はただ自分の可能の世界でしか自身を尊敬しない。

ナタナエル、私の本を棄ててくれ。そこに満足していてはいけない。君の真理は誰か他人によって発見されるものだと信じてはならない。何よりも、そのことを愧じるがよい。私が君の糧を探したとしても、君はそれを食べるほど飢えてはいまい。私が君の臥所の支度をしても、君はそこで寝ようとするほど睡くはあるまい。私の本を棄ててくれ。。そしてよく理解してくれたまえ。ここに書いてあることは、人生に対して可能な数千の態度の中の一つにすぎないのだ。そして君の態度を探し給え。
26.君以外のだれかに君と同じほどよくできることだったら、したもうな。君以外のだれかと同じほどよく言えることだったら、言いたもうな。まだだれか他の者と同じほどよく書ける者だったら、書きたもうな。君自身のうち以外にはどこにも存在しないと感ずる以外のものに執着を持ちたもうな。そうしてゆうゆうとでもよろしい、あわただしくでもよろしい、とにかくあらゆるものの中にあって代用物のない君を想像したまえ。

・その他
01.報償の観念を捨て去ることがたいせつだ。。なぜかというに、それは精神にとっての大きな障害物だから。

02.ここで注意すべきは、自分の道は、自分以外の者には発見できないということだ。

03.ナタナエルよ、道すがら君はすべてを注意深く見て過ぎたまえ、ただどこでも立ち止まることだけはしたもうな。

04.ナタナエルよ、僕は待ち遠しさについて君に語ろう。ナタナエルよ、君のうちにある待ち遠しさの一つ一つが、欲望でさえなくて単に受け入れる準備であるように下目。全て君に来るものを待ちたまえ。ただ君にあるもの以外を欲し多毛な。一日のあらゆる瞬間に君は髪をその完全な姿に置いて所有しうると理解したまえ。

05.君の欲望は愛でなければいけない。君の所有は、愛情をもってしなければいけない。効 (かい)のない欲望では意味ないのだから。

06.僕の幸福は、色々特殊なものの総和から成り立っていずに、それらのものに対するただ一つの熱愛から成り立っていた。

07.ナタナエルよ、これが僕の魂の熱情の全てだ、持っていきたまえ。あんアタナエルよお、僕は君に熱中を教えたいのだ。

08.詩人の才能というのは要するに絶えず新しい気持ちで物に接する才能にほかならない。

09.僕が出発するのはたいして別なものが見たいからではないのだ。それよりはむしろ自分に必要欠くことのできないもの以外をすべて自分から切り離したいと思うからなのだ。

10.世にはすばらしい住宅がある。しかしそのいずれにも僕は長くとどまろうとはしなかった。これが精神を閉じこめる監房になるからだ。

カテゴリー: book