雨の日のスペインとわたし

今、わたしはMadridのホテルの一室にいる。昨日Barcelonaで再会した友人のことをぼんやりと思い出していた。友人とはバルセロナ広場で待ち合わせをして、近くのカフェに入った。およそ8年ぶりの再会は非常に印象的だった。お互いを取り巻く環境が大きく変わり話は尽きない。カプチーノを飲みながらお互いの近況報告の中で、彼は結婚し、仕事も順調で今が人生で一番いい時だ、と目を輝かせながら語っていた。

知り合ったとき、私たちは20代の学生だった。場所はLondon。感情表現が豊かで、よく喋る印象を持ったが、その反対に時折暗い顔見せる男だった。彼がスペインに帰国後、改めてその友人を訪ねたのが2010年だったと記憶している。バカンスだった。

当時、彼は無職だった。友人の家に泊り込み、だから毎日一緒に遊んだ。バイクで様々なところへ行った。そして日が暮れるとクラブへ行っては朝まで飲んでは踊り、彼の実家で爆睡する、そんな日々を繰り返していた。(なので徒歩10分圏内にあったガウディは横目に通り過ぎるばかり、結局行かずじまいだった。今思うと本当に馬鹿だと思う。)

忘れられない思い出がいくつかある。その一つは、ある週末の彼の家族とランチだ。そのために彼の両親と彼の2人のお姉さん夫婦が勢揃いした。豪奢な部屋に通され、観たことのない長さのテーブルに、メイドらしき人が次々と料理を運びこんでくる。映画のゴットファザーのようだった。その場でTシャツを着ていたのは私だけだった。あの瞬間わたしは紛れもなくBarcelona一の間抜けだったと思う。でも彼らは優しさに満ちていて、話は尽きることがなかった。

Barcelonaを発つ日の朝もまた忘れ難い。朝、友人のお父さんに誘われて、2人で街中を散歩した。(なぜそんな顛末になったかというと友人たちとは前日というかその日の朝までクラブでお別れパーティを開いていて全員泥酔してしまったから。わたしも二日酔いだったことはいうまでもない。)話をしながら街を歩き、バロセロナの歴史について少し教えてもらったりした。そのレッスンの一つとしてある建築家の博物館へ行った。そこでわたしの友人はその建築家の孫だと知った。(自ずと様々な謎が解けた)。その後、バルへ。タパスをつまみ、ワインを飲んだ。結果として迎え酒となった。

「次はどこに行くつもりなのか」と聞かれ「Madridです。その先はこれから考えます。」と答えた。「MadridではMuseum de Pradoには必ず行くといい」そして「Cordova,Sevilieは素晴らしいからおすすめだよ」友人のお父さんは付け加えた。旅の行き先が決まった瞬間だった。

あの日から8年後の昨日、僕はBarcelonaにいて、今、Madridにいる。外は季節外れの雨だ。ホテルの部屋で雨音を聴きながらぼーっとしていて、昔話を思い出していた。雨はどこか思い出を呼びさますものらしい。そしてそのいずれも、美しいものばかりだ。また雨は時間の進み方を、ほんの少しゆっくりと感じさせるかのようだ。そしてそれはとても優しいスピードだから、過去を振り返る余裕ができるのだろう。

そんなことを考えていると、いつまにかマーケットで買った安ワインのボトルが空になっていた。明日はMuseum de Pradoに行こう。明日の行き先が決まった瞬間だった。

8年で大きく変わったこともあるが、こんなところは全く変わっていない。

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