石川直樹 / Naoki Ishikawa

石川直樹 ヒマラヤシリーズ

石川直樹によるヒマラヤシリーズ5部作。

1.Lhotse / ローツェ
2.Qomolangma / チョモランマ
3.Manaslu / マナスル
4.Makalu / マカルー
5.K2 / ケーツー

これらの本は少しずつ買い足し、やっと集まった作品だ。発売日順に並んでいるけど、一番最初に買ったのはK2だった。山の存在感の大きさはもちろん石川直樹氏の写真に惚れ込んでしまったことから、集め始めた。その結果、新たな発見に出会うのだが、まずは一つ一つ順に見ていく。

1.Lhotse / ローツェ

NAOKI ISHIKAWA Lhotse
タイトル:Lhotse / ローツェ
出版社 :SLANT
出版日 :2013/10/18

ローツェはエヴェレストの隣にある山で標高は8,516m。世界で4番目に高い山である。なおエベレストの南側にあることからチベット語で「南峰」を意味するローツェと名付けられている。本作は2011年秋と2013年春の遠征の写真によって構成された写真集となる。

Lhotse|Naoki Ishikawa from SLANT
Lhotse|Naoki Ishikawa from SLANT

p.16の写真が好きだ。雄大な山々を背景に、石が積まれている写真で、厳しい自然の中に、ちっぽけな人間の営為が、(祈りといってもいいかもしれない)そこに感じられるからだろうか。

p.34の写真は、思わずハッとしてしまう。こんなところにも動物が、いや生命がいるのかと。

p.41の切り立った崖の美しいこと。ライン、白と黒のコントラスト。これが自然が作りし造形に見とれてしまう。

最終ページ、石川直樹が語る山頂付近でエピソードに、改めて山の厳しさを知る。美しくもあるが、人の存在を許さない場所、それが山なのだ。

2.Qomolangma / チョモランマ

NAOKI ISHIKAWA Qomolangma
タイトル:Qomolangma / チョモランマ
出版社 :SLANT
出版日 :2014/02/20

2001年5月23日、石川直樹氏は23歳で、チョモランマの登頂に成功した。この時、チベット側から登ったため、現地の言葉でエヴェレストを意味する「チョモランマ」という呼び名を尊重している、という記述があった。本作は2013年末から2014年初頭のチベットと、2001年の登頂時に撮影したものによって構成されている。

Qomolangma|Naoki Ishikawa from SLANT
Qomolangma|Naoki Ishikawa from SLANT

p.14に到るまでで、チベットという国と信仰という行為が分かち難く結びついていることが伝わってくる写真が続く。テキストにもこうある。「For them, praying is the same as living. / 祈ることは、すなわち生きることでもある。」

p.20の写真に映るのは原色に彩られた無数の旗。現地の言葉でタルチョと呼ばれる祈りの旗らしい。

p.30の写真はヒマラヤ山脈。かつてこの山脈が海の底にあったなんて想像がつかない。

p.46「(中略)ヒマラヤの山々が眼下に見える。ここより高い場所はどこにもない。」これだけの言葉でこうも心を揺さぶられるとは思わなかった。それは突如、死の匂いを感じさせられてしまったからだと思う。

3.Manaslu / マナスル

NAOKI ISHIKAWA Manaslu

タイトル:Manaslu / マナスル
出版社 :SLANT
出版日 :2014/09/15

マナスルとはネバール中央部にある山で標高8,163m、世界で8番目に高い山だ。マナスルという名前はサンスクリット語で「精霊」を意味するMANASが元になっているそうだ。本書は2012年8月26日から10月6日に撮影された写真で構成されている。

Manaslu|Naoki Ishikawa from SLANT
Manaslu|Naoki Ishikawa from SLANT

p.22 雪山の夜、月の明るさを想像させる。

p.26 生命の存在が感じられない雪と氷の世界。

p.47 今回の遠征中に、雪崩によって10人近い登山家たちが犠牲になったことが明かされる。一体、山に登るとはどういうことなんだろう。亡くなってしまう人と生き残る人の違いは一体なんなのだろうか。

4.Makalu / マカルー

タイトル:Makalu / マカルー
出版社 :SLANT
出版日 :2014/09/30

マカルーはエヴェレストから南東19kmに位置する標高8,463mの世界で5番目に高い山。2013年春と2014年3月31日から6月2日の間に撮影された写真で構成されている。

Makalu|Naoki Ishikawa from SLANT
Makalu|Naoki Ishikawa from SLANT

p.21,22 遠近感がなくなって感じられるがとんでもない距離なのだろう.

p.29 鳥の写真があって驚く。こんなところでも生きているのか。

p.31,32 凶暴な氷と岩

p.39 なんて神々しい写真なのだろう。山登りが神聖な儀式のように思われるほどだ。

p.42 人間ってすごいな、目頭が熱くなってしまう。

p.44 世界でもっとも美しいポートレート。

山の美しさが際立った写真集という印象。本書から、死の香りがしなかったからかもしれない。

4.K2 / ケーツー

NAOKI ISHIKAWA K2
タイトル:K2 / ケーツー
出版社 :SLANT
出版日 :(2015/12/30

石川直樹氏にとって慣れ親しんだネパールサイドではなく、パキスタン側からの登頂を試みた遠征。カラコルム山脈にあるK2の標高は8,611m。エベレストに次いで世界で2番目に高い山である。本書は2015年5月13日から6月4日、そして6月13日から8月19日の間に撮影された写真によって構成されている。

K2|Naoki Ishikawa from SLANT
K2|Naoki Ishikawa from SLANT

これまでの写真集と打って変わって賑やかな人、人、人の写真で始まる。また本作品は最終ページまでテキストは出てこない。写真から自分なりに読み取るまでだ。

p.21 何もない平地に敷かれた一本の道路が山へと伸びていく。

p.38 この写真は一番好きな写真で、いつか見た雑誌から切り取って壁に貼っている。馬、シェルパ、雲がかった山の3つのレイヤーで表現された写真。

p.39 シェルパの履いている靴に驚く。ほぼサンダルじゃないか。

p.42 山を背景にしたシェルパたちの集合写真だろうか。構図が素晴らしい。

p.46 高い標高かつ雪に囲まれながらも、軽装なシェルパに驚く。

以降、美しさと迫力溢れる山の写真が多数収められている。なお登頂としては天候が崩れたことにより撤退している。

5.summary / まとめ

今まではいつか自分もだなんていう甘い幻想や、写真の上っ面だけの美しさばかり見つめていた。しかし、石川直樹氏のこれらのヒマラヤシリーズのすべてに目を通すと、死生観が変わりそうなほど、気持ちが揺さぶられてしまった。

たとえば、きっと私はローツェの山頂に、鎮座する遺体を忘れることができないだろう。彼は帰ってこれない。ずっとそこにいる。この事実は私にとってなぜかとても重いのだ。

死んでしまった彼は山頂へたどり着けたのだろうか。家族は、彼がそこにいると知っているのだろうか。知っていても、誰もがたどり着ける場所ではない。

永遠にも近い断絶がそこにはある。

そしてこの断絶は、私たちと登山家の間にも確かにある。この写真集以降、わたしには山登りという、生き方、生き物がわからなくなってしまった。

石川直樹氏は登山家として「死」を騒ぎ立てず、ボぼそりとしか語らない。それがまた彼にとっての現実をいっそう物語るのだ。

今ちょうど以下の通り、展覧会をやっているみたいで是非行ってみたいと思っている。

石川直樹「この星の光の地図を写す」
会期:2019年1月12日〜3月24日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1・2)
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:03-5777-8600
開館時間:11:00〜19:00(金土〜20:00)
休館日:月(祝日の場合は翌平日)、2月10日(全館休館日)
料金:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料

2019/03/17 追記
実際に行ってきました。内容はコチラ

6.link / リンク

東京オペラシティ アートギャラリー
石川直樹 東京オペラシティ アートギャラリー

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