斉藤 倫 , 植田 真 「えのないえほん」(講談社, 2018年)

えのないえほん 02

胸が締め付けられるような感情の波が押し寄せた本は久しぶりだ。

ある1つのつぶやきで絵本は物語を終えるのだが、
そのつぶやきは、最も切実な、自分の存在を取り扱うつぶやき、であった。
ここで語られる醜さ、そして美しさは一体何を見つめたものなのか。
わたしたち普段語る醜さ、そして美しさは一体何を見つめたものなのか。

もし眼が見えないとしたら、私は美しさを捉えることをできるだろうか。
そもそも美しさとは眼に見えるのか。

そうではなかった。わたしは、眼に見えるものに、知らず知らずのうちに囚われすていたことに気づかされる。
本質的であろうとしていた私は浅はかで上っ面な人間であったことに気付かされた。

この絵本は「醜さ」を語ることで、大切なことを描き出した。
そう、この本は、美しさについて一切語らずに、「美しさの持つ罠」について雄弁に語っている。

それがゆえに、娘にこの本を読むときに、涙が溢れそうになり、
毎回最終頁を声に出して読むことがむつかしい。

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